ゆれないで
「いわきでつくるシェイクスピア・ファイナル」の幕があいた。
プロジェクトは5年間続いたが、昨年は、本番の1週間前に震災が起き、そのまま中止となってしまったので、本番は4回目となる。これまでで一番の参加者、そして一番の集客が見込まれている。
明日は15:00開演。開演前、14:46にはお越しのお客様とともに黙祷をささげることになっている。私たちチケット係も、手を止めてともに祈りたいと思っている。
その日はできるかぎり心静かに過ごしたい、喪われた命のためにただいのりたい。でも、アリオスで明日いちにちを過ごせることが、私にとってはもっとも心静かに過ごせる方法かもしれないと思う。
1年前、リオに旅立つ前、なぜだかぜんぜん行きたくなかった。休暇とはいえ招聘するアーティストに会いに行くんだし、チケットやビザも早々と準備していたので行かないわけにはいかなかったんだけど。
相棒に自宅の鍵の在処を言いおいたり、仕事のファイルのバックアップをわかるところにおいておいたり、戻って来れないことを前提とした旅の準備をしていた。なんと遺書まで書いていた(笑)。
東京へ向かうスーパーひたちの車窓から、勿来の海をみるのがいつも楽しみなのに、うっかりうたた寝してみられなかったことをくよくよと後悔した。わたしは、てっきり自分の命がなくなってしまうんだとばかり思っていたのだ。
3週間して、帰ってきたら、大好きなだいすきないわきは、「被災地」になっていた。
それから1年。わたしは、住まいも、仕事も、愛する人も喪うことはなかったし、たくさんの人たちの愛に支えられながらなんとかいわきで生きてこれたことに心から感謝しているが、そんなわたしですら、なくしてしまったもののあまりの多さと重さに呆然とする。ここで生まれ育った人たちならばなお、その苦しみははかりしれない。
「起こることのすべてには意味がある」というけれど、今目の前にある試練はほんとうに乗り越えられるものなのだろうか。乗り越えられたとしたら、その先にあるのは、いったいなんだろう?
せっかくだから、すべてを味わい尽くしたい、と思う。命がなくなるまで。
どうか明日は、地上のどこも、ゆれませんように。
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