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ちがうこと、おなじこと

グラスゴーの空港からバスで20分、中心地のブキャナン・ストリートまで出ると、バス停でクリスが待ってくれていた。「すごい! ぺこがグラスゴーにやってきた!」と満面の笑みで迎えてくれた。

クリス・スタウトは、スコットランド・シェトランド諸島出身のフィドラー。14歳の時に同じ島出身の同級生とともに結成した「フィドラーズ・ビド」、クリス・スタウト・グループ、そして12月にいわきアリオスで演奏してくれる「カトリオーナ&クリス」など、スコットランド伝統音楽の若き先鋒として活躍している。

パートナーのローレンスもフィドラー。彼女はスコットランド西部のちいさな町に生まれ、10歳の頃からフィドルを始めたという。

クリスが作ってくれた不思議な日本食(失礼!)をいただいたあと、電車で30分、ローモンド湖につれていってもらう。
電車の中で、スコットランド伝統音楽の楽器の話、アイリッシュ、スカンジナビアンミュージックとの違い、そしてなぜ二人はクラシックではなく「伝統音楽」を選んだのか、という話を聞いた。…といっても、英語がかなりあやしいので4割くらいは取りこぼしているような… でも一生懸命ふたりがかみ砕いて説明してくれたので、だいぶ理解はできたんじゃないかと思う。
バンロッホという駅に着き、遊覧船乗り場へ直行。1時間のクルージングを楽しんだ。17世紀にたてられた古城や貴族の屋敷がいまも高級ホテルや資料館などとしてのこっている。それを湖の上からゆったりながめた。日差しが適度にあるいいお天気で、風もおだやかで、クルージング日和だった。

帰りがけにたちよったマーケットで「ハギス」なるふしぎな物体を発見。なんか、なんか、ソーセージの皮のような丸い袋に、黒いものが…「ハギスって、なーに?」ときくと「スコットランドの名物だよ! よし、今夜はハギスにしよう!」と即決定。
羊の腸に、肉や内臓、オーツ、スパイスなどをつめたソーセージのようなものらしい。1時間、皮のままゆっくりゆでて、皮を裂いて中身をお皿に取り出し、マッシュポテトとにんじんを蕪をマッシュしたものといっしょにいただく、というものでした。スパイシーでおいしい。赤ワインによくあう! 濃厚で癖は強いから、好き嫌いはあるだろうなあ、でもわたしはけっこう楽しめました。
クリス、ほんと料理上手。

夕食後、ローレンスはフィドルの生徒がやってきてレッスン。そのあいだ、ゆっくりワインを飲みながらクリスと話をした。
12月のいわきでは、山間部にある全校生徒15名程度の小中学校など、2つの学校で、カトリオーナと二人にレクチャーコンサートをお願いすることになっている。そのことを話すと「それはエキサイティングだ!」ととっても喜んでくれた。
ワールドミュージックを子供達に届けたいのは、世界中には、多様な価値観を持った民族が生きているということ、そしてそれぞれのアイデンティティの象徴として音楽やダンスが受け継がれているということを紹介したいから。それがふだんの学校生活や彼らの人生にどんな影響があるともわからないし、期待もしていないけど、「ちがう」ということを理由に、人が人を傷つけたり排除することはするべきでない、ということを、彼らの音楽に託したいとひそかに思っている。
わたしがそんな話をしたら、クリスはおだやかにこう返してくれた。「僕は、同じだということを伝えたい」と。
肌の色、ことば、宗教、ポリシー… そんな「表面的なこと」がいくら違っても、人はみんな同じ。悲しいこと、嬉しいこと、わきあがる感情、こころのなかにおこるものの根っこはみんな同じだ、と。音楽は、それを教えてくれるんだ、と。
ああ、よかった、自分の話はちゃんとクリスに通じたんだなあ、と思った。
言ってることはまるきり逆だけど、同じなんだよね。

ボトルがからになり、「ちょっと僕もあっちをのぞいてくるよ、ぺこはちょっと眠って。あとでパブに行こう!」と、クリスはローレンスのレッスンをのぞきに行った。スコットランドの伝統音楽は、アイリッシュや北欧のそれと比較して、奏法もビートも力強い、と昼間ふたりが教えてくれた。クリスの芯の太い音が扉の向こうから聞こえてきて… わたしはそれきり朝まで目が覚めませんでした、とさ。


Photo
Chrislaulence_2

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